六界 そして現代へ 面倒なのが来た…… 窓の外で手を振る白蘭。 もう、奴が飛ぶのは標準だからいちいち驚かない。 コンコン叩く音についカーテンを開いちゃったんだけど…… 「………」 『ちょ、無視しないで、無視しないで!!』 カーテンを引こうとするとバンバンと窓を叩かれた。 もうなんだよ…… 諦める様子の無い白蘭に仕方なく窓の鍵を開けてやる。 「もー、今日は疲れてるから寝たいんだけど。」 「ボンゴレ式ハロウィンパーティーでしょ。うん、大変そうだったね!」 「お前はすっぽかしたけどな……」 白蘭だけじゃないけどな……!! ていうか「大変そうだった」って事はお前、見てたな……どこかで!! そう聞けば「うん」と悪びれない返事が返る。 だよねー!!!! 「だって見てないとチャンスが分からないからさ。」 「……なんの?」 聞き返してみても白蘭はニマニマ笑うだけだ。 こいつ……不思議の国のアリスの猫みたい。 「まだ下騒いでるけど戻らなくていいの?」 「あれはうちの酔っ払いとおじさん連中。未成年は解散だって。」 「そか!じゃ綱吉クン」 ぐい、と腕を引っ張られる。 力を抜いてた俺の体はそのまま窓の外へ。 「ちょっと付き合って。」 「うわっ!?」 白蘭は俺が抵抗する前に両腕を掴んで屋根より上空へと飛んでいく。 自殺願望なんかない俺はこの高さじゃ白蘭の腕にしがみつくしかない。 「白蘭!」 「大丈夫。」 声を荒げると白蘭がニンマリと笑ったまま顔を近付ける。 「君を害する気なんか、ないよ。」 薄く開いたチャロアイトの瞳は穏やかな色をしている。 過去になる未来で対峙した時の酷薄そうな光はどこにも無い。 「……んなことは分かってる。そうじゃなくて吃驚すんだろ、先に言え!」 「あっは、ごめんね〜。」 「それで、どこ行くんだ?」 「着けばわかるよ。」 着く前に知りたいんだっつの…… * * * * 「!」 何か、一瞬体を通り抜けるような嫌悪感。 これは…… 向かいにいる相手に視線を飛ばす。 「……今、何かした?」 「冷えてきましたからね。この空間だけ適温に感じられるように少し弄りました。」 「ふうん……」 ティーカップを傾けて口元だけで笑う男。 幻覚にかかるのはあまり好きじゃないんだけど…… 別に気遣いでやったわけじゃないことは分かってるからそのまま放っておく。 寒いのやだし。 「……大した過保護っぷりじゃねぇか。」 獰猛な獣の唸り声を思わせる声。 今までふんぞり返って微動だにしなかったから寝てるのかと思ってた。 興味が無いから視線を逸らし下の風景を見つめる。 「過保護、ね……自己管理をするのは当然のことでしょう。あれはいずれ僕の体になるのだから。」 「ふん……」 馬鹿にしたような笑い。 音にはならないが僕の顔にも浮かんでいる筈だ。 お決まりの口上。 嘘をつくことに慣れすぎた人間は自分にすら嘘をつく。 彼の本心などどうでもいいが…… 果たしてそれは周りを騙す嘘なのか、自身を誤魔化す嘘なのか…… どちらにしろ僕には関係ない 「って言えないとこが面倒なんだよね。」 「?」 怪訝そうな視線がこちらに向けられる。 声に出てたか…… 誤魔化すつもりは無いけどなんとなく上空を見やる。 「あ。」 * * * * なんとなく、近くに来た辺りで目的地の検討はついていた。 でもまさか屋上に降ろされるとは思ってなかったな…… 「ここ、ディーノさん達が泊まってた……」 「そ!ここらで一番いいホテルって言ったらここでしょ。」 ホテルなんか泊まらないから知らないけど……ヴァリアーも居たくらいだし多分、そうなんだろう。 それより気になるのはホテルの屋上になんか豪華そうなソファーやらテーブルやらが並んでてそこになんでこの顔ぶれが居るのかってことだ。 「待ちくたびれたよ、綱吉。」 「ええ、本当に。」 「サボリ犯発見……!!」 協調性皆無を争う二人がハロウィンパーティーなんかに来ないことは分かってた。 けどなんで仲良くこんなとこでティータイムしてるんだろう…… そしてもうひとり…… 「遅ぇ、カス。」 「あ、起きてた。」 動かないから寝てるかと思ってた! テーブルに足かけていつもの椅子にふんぞり返るザンザス。 ヴァリアーメンバーはパーティー来てたのにボスはサボリか……自由だな…… 「さて、じゃ始めよっか!」 「……何を?」 まさか今からハロウィンパーティーでもすると……? このメンバーで!? 思わず身構えてると骸がくつくつと笑い出す。 「そんな訳ないでしょう。」 「ちょ!?思考読むな!?」 「読まなくても分かります。ハロウィンなんて、僕らにはどうでもいいことですよ。」 「え…ちょ!?」 背後に立った骸に両目を塞がれる。 突然なんだ!? わたわたしてると両手を掴まれた。 「そんなビクビクしなくても虐めないよ?……………今はね。」 手を引かれるままに歩き出す。 後付けの「今はね」に不安を感じるけど声が柔らかいから、素直について行く。 かなり歩いたと思う。唐突に目隠しの手を外される。 「?」 目の前には大きな四角い白い箱。 白蘭がその箱の蓋を開く。 「はい、じゃ〜ん♪」 「!」 蓋の中身は薄い黄色の四角いケーキだった。 ケーキの上に横文字で俺の名前が入ってる。 な、なんで……!? 振り返ると骸が笑って緑のリボンを結んだ手首を見せる。 「僕らの誕生日を祝って、君の誕生日を祝わないわけにはいかないでしょう?」 「え?でも……」 「当日に祝えなかった。それ気にしてんの?」 やる気なさげに欠伸をする雲雀さん。その手首にもやっぱり赤いリボンが巻かれている。 「僕が祝いたい時が誕生日なんだよ。君に拒否権はない。」 「雲雀さんルール……」 「まー、いいじゃない。」 がっしりと肩を組んでくる白蘭。 服の装飾に紛れて気付かなかったけど首に藤色のリボンがあった。 「会ったことないご先祖の霊なんかより綱吉クンの誕生したお祝いの方がず〜っと大事。 僕らには特にね。」 「バチあたっても知らないからな……」 「っは!」 「でっ!!」 ズシリと首にかかる負荷。 いつの間にか近付いてきてたザンザスが俺の頭を肘置きに……!!痛い痛い!! 「罰よりてめぇは蝋燭の数でも数えてやがれ。もう増えねぇかもしれねぇ蝋燭をな。」 「祝ってないだろ……お前絶対祝う気ないだろ……!!」 でも腹立たしいことにネクタイみたいにだらしなく、首にやっぱり臙脂のリボンがある。 「いいから早く吹き消せ、カス。」 「誕生日の歌とか歌うべきなんじゃない?」 「ホラー過ぎます。却下。」 「………綱吉、どうしたんだい。」 「……………」 急かされる儘に、ケーキの前に立つ。 顔を上げると四色のリボンと4対の目。 ……なんていうか。 言い表せないよ、この感情は。 ケーキに刻まれた「HAPPY birthday」の文字に頬が熱くなる。 「――――ありがとう。」 気恥ずかしいから、小さく呟いた。 祝ってくれて、ありがとう。 END PCでは大分遅れましたが、ハロウィン企画でした。 10/30の深夜に思いついて、当日に入って朝から日付変更ギリギリまで書いてました。 死ぬ気になればまだまだやれるもんだなぁ、と(笑) でもかなり力を出し尽くしたのでもう突発で無茶はやらない…
っていいながら毎回自分の首を絞める企画してるんですが。 さて次は「あの」イベントですか…今年はやれるのかなぁ…
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