殻の割れる日 「み〜ど〜り〜たな〜びく〜♪」 「ヒバード。」 呼びかけてやればぴょいと頭に飛び乗る黄色い小鳥。 卒業生の作品だとかいう銅像が最近の彼のお気に入りらしい。 それと俺の頭の上。 「卒業生はこの後写真撮影あるらしいんだよ。ヒバードも写る?」 ツンツンと髪を引かれた。「イエス」という意味みたい。 この賢い鳥との対話方法。 髪を引くのがイエス。もぞもぞ体を揺するのがノー。 単語も覚えているが歌の方が覚えるのが好きらしい。 「…雲雀さん何してるかなぁ…」 桜を見ながらポツリと呟けば小鳥が肩に移動する。 そちらを見ればくりくりした目が俺を見上げている。 マフィアのボスにはなる。でも、イタリアには行かない。 そう俺は決めた。認めてくれないのなら他を当たれと。 本部?知ったことじゃない。 伝統?それもどうでもいい。 血筋?それがなんだというの。 俺は我が身が可愛いから。 俺はちっぽけな存在だから。 守りたいもの以外にまで目を向ける余裕はない。 本部。 故郷を離れて、守りたい人たちから遠く離れて。力を手にしたって盾になれなければ意味がない。 伝統。 それが為に骸達の悲劇が産まれた。下らぬ正義心が必要ない犠牲者を増やし、悲しい殺戮者を作り上げた。 血筋。 異国の血に、繋がらぬ血。その隔たりは必要あるの?銀髪の子供。性根の優しい彼が悪童と呼ばれ歪んでしまったのは何の価値もないその壁のせいだろう? 全てを捨ててまで行く価値があの国にはある? 大切な妹を置いて。 可能性ある夢を捨てて。 その無邪気さを無くして。 苦しい過去を孕んで。 激しい憎しみを宿して。 何より愛しい、この町を忘れて。 そしてそれら全てを踏みにじって「包容する」?冗談じゃない。 『まあでもそううまくはいかないだろうね』 いつもの学ラン姿でニヤリと笑う人。 あれは中学の卒業式。あの人を最後に見た日だった。 『でも行きません。』 『でも誰かがうるさい連中黙らせて来ないとねぇ。』 『…それは、俺』 『僕が行ってあげるよ。』 『ええ!?』 『君は義務教育を終えてないだろう?』 『でも雲雀さんだって…』 『言っただろ。』 バサリと学ランを脱ぎ捨てて不敵に笑う雲の守護者。 『僕はいつでも好きな学年なんだ。』 「ツナヨシ。」 「ん、ああ…ごめん、ボーっとしてた…」 肩に止まって中学の校歌を歌う小鳥。 懐かしい。昔はよく見た光景だ。 雲雀さんはあの後リボーンと一緒に本国に発ったのだという。 俺に黄色い小鳥を残して。 足に「帰るまでエサよろしく」って書いてある手紙見つけて笑ってしまった。 電話で言えばいいのに。 それから一年たって俺達は中学を卒業した。雲雀さんは帰ってこない。 俺も行くと言ったら「そのおつむをどうにかするために高校に行け」と二人に言われてしまった。 俺の進んだ高校は学ランが制服だった。 色は違うけれどあの人を真似して学ランを肩に掛けるのが癖になってしまった。 まだ、あの人が帰ってくる気配はない。 「う〜ん、獄寺くんたちと約束した時間までまだあるなぁ…」 寄り道しようか。 そう言えばツンツンと髪を引かれた。 同じ高校にこだわる二人に違う学校を選ばせたのは俺だ。 俺達はこれから同じ道を行く。 ならマフィアだなんだと言う前に、流されない自分の道を定めよう、と。 獄寺くんは医療系の学校へ。 山本は強くはないが思い切り野球の出来る学校へ。 俺は語学系の学校へ。 「ヒバード、ほら並中!!懐かしいだろ。」 門を越えると小鳥は興奮したようにパタパタと飛び回り校歌を熱唱する。 「お前も並中、好きだよなぁ…」 「君も好きだろ?」 「そりゃあ、思い出が…」 ガバッと振り返る。 黒いスーツ姿でニヤリと笑う人。 「雲雀さん!?」 「やあ、沢田綱吉。ちょっと見ない間に伸びたね。チビだけど。」 「チビは余計です!!」 走りよると雲雀さんの頭にぽふっとヒバードが乗る。 「なんか思ったより面倒なことになってて今まで時間かかったんだよね。」 「面倒って…」 「大体は9代目と赤ん坊がなんとかしたんだけどあの金髪の外人とかうるさくて。咬み殺しといたけど。」 「うわあ…」 「骸のいたなんとかってファミリーもごちゃごちゃしてるし…なんか面倒だから纏めて始末しといた。」 「へ!?」 「赤ん坊がね。完璧にとはいかないけどしばらくは問題無いはずだよ。」 雲雀さんが俺を見下ろす。 「学生生活は終わりだね。」 「そうですね…」 「これからよろしくボス。群れないけどね。」 またニヤリと笑う年齢不詳の浮き雲にこちらも同じ笑いを返す。 「こちらこそ。」 END …何も言わないでください。 無理。 本当に無理…ほのぼのとか…もう絶対やらない… 普通にいつも通りSに鬼畜に走れば良かった… 本物駄文となってしまいましたが直さんに捧げます… こんなでごめんなさい… |