DAY7:迷犬注意。





「はいはい、大歓迎ですね〜。」


ケージに近付くと愛犬達が興奮してピョコピョコと跳ね出す。

犬は可愛いですねぇ…癒されます。


「さっさと入れよ、繋げねぇだろ。」

「分かってますって。」


リードを二本持った獄寺が仁王立ちしている。全くうるさいですねぇ。

これから夕飯前の散歩の時間だ。いつもは獄寺一人の仕事らしい。だが今日は綱吉くんが犬と遊びたがったので僕も着いていくことにしたのだ。

二本足で立ち上がってケージから頭を出す茶色の犬の頭を撫でる。

可愛いです、まふっとしてます、たまりません。


「こっちは?」

「マリルです。子犬の時から居ますがまさかこんなに大きくなるとは。でもこの毛のもふもふが最高です!」

「あっちの黒いのは?」

「チャックですよ。こいつは飼えって押し掛けてきたんです。」

「君のようですね、自称右腕。」

「うるせぇ、ファンシーフェチ。」


チャックは奥の方に繋がれていてこちらに来れないものだから二本足で立って必死に「来い来い」と前足でやっている。

ぐりぐりしたい…

獄寺は耐えられなかったらしくケージを飛び越えチャックに飛びつくとスリスリと頬摺りを始めた。


「よぉぉしよし!!可愛いなぁ、お前はあぁぁ!!!!」

「……な、何あれ…」

「獄寺はチャックを溺愛しているもので。過剰なスキンシップはいつものことです、気にしないでください。」

「……お前もな。」


ん?犬に頬摺りはしてませんよ、のし掛かって抱きついてるだけで。


「ほら、二人とも。さっさと散歩終わらせないと雲雀さんが来るぞ。」

「!そうでした。」


忘れてた。今日は雲雀が帰ってくるんでした…

マリルをリードで繋ぐ。途端にぐいと引っ張られた。体が大きいから力もそれなりだ。


「何かやれる?」

「まあ、一応は。「おすわり」と「待て」とお手」は教えてます。」


フェンスの一角に2匹のリードを引っ掛ける。

飛びかかろうとする愛犬を宥めて「おすわり」と「お手」をしてみせると綱吉くんは手を叩いて喜ぶ。


「ホントにやってる!」

「僕らではなく犬と千種が教えたんですけどね。」

「チャックは賢いからいいんですがマリルの野郎は教えたのと違う芸やるんで…」

「?どんなの?」

「綱吉くん、ここにしゃがんでください。」

「こう?」

「マリルお手。」


綱吉くんを指差してそう言うとマリルはおすわりの状態からゆっくり二本足で立ち上がり、前足を伸ばして万歳をしたあと、がばりと綱吉くんにのし掛かった。


「ぎゃわ〜っ!!!!」

「アレキサンダー・アタックです!」

「あ〜あ。だから押し倒されないように気をつけろって言ったじゃないですか。」

「分かっててやるな!!なんだよアレキサンダーって!!」

「ハガレンの一巻でアレキサンダーという犬に主人公が飛びかかられて潰されるシーンがあるんですがそれが今の綱吉くんとマリルにそっくりなもので。」

「因みに初めの被害者はこいつで命名したのもコイツです。」


マリルの前足を掴んで立たせ退かしてやる。綱吉くんは慌てて立ち上がるとリードの届かないところまで避難する。

うちの犬はそんな危険じゃないですよ?前科はありますけど、前科は。


「ほらほら、撫でてあげてくださいよ、綱吉くん。可愛いんですよ〜!」

「俺抑えてますから。」

「……押し倒さない?」

「チャックは大丈夫ですよ。軽いですし、そいつと違って。」


獄寺に促され恐る恐る手を伸ばす綱吉くん。

でもチャックがじっとしているのを見て安心したらしい。しゃがみこんで頭を撫で始めた。


「毛、ツヤツヤ。可愛い。大人しいね、この子。」

「とんでもない。こいつは近所でも有名な脱獄犬ですよ…」

「脱獄?」

「もう脱走なんてもんじゃないんで。」

「『飼え』と押し掛けて来ながら飼い始めると縄切って逃走するんで有名なんです。」

「…そりゃ、傍迷惑な。」


そうですよ…

うちに来る前まで居た家では小屋からおもちゃまで揃えたのに逃げてきたんですから、この犬。


「縄は噛みきり、ケージで囲めば飛び越え、南京錠もどうやってかこじ開け、ワイヤーで繋げば杭から引き抜き、杭抜けなくすれば首輪抜けし、鎖に変えれば連結外し…」

「え、それ作り話…」

「じゃないです。実話です。学校から帰ってきたら鎖の先に杭ぶら下げたチャックと遭遇したことありますから…」

「それは骸並みな。」


彼ならきっと『復讐者』の牢獄も脱獄できますよ、本当に。


「でも今まだ飼ってるよね、なんで?」

「それは犬や千種たちの執念…もありますが単にチャックがうちを気に入っているのでしょう。彼との相性もいいようですし。」


僕の腕に掴まって二本足で立ち上がっているマリルが頷くように鼻を鳴らす。


「逃げようったって逃がさねーけどな!」

「…あとは君の右腕の愛情、でしょうか。濃厚ですが。」

「濃厚だねぇ…」


黒犬に抱きついてすりすりと頬摺る獄寺。

ほんっっとに大好きですねぇ…チャック。

同じく濃厚な愛情を向けられている綱吉くんが星空を見上げて遠い目をしている。


「…獄寺。愛犬物語はそれくらいにして行きますよ。」

「そーだな。」

「綱吉くん、リード持ちます?」

「うん、チャックのなら。」

「そう嫌わないでやってくださいよ。こいつも可愛いですよ〜。」


わしゃわしゃとマリルを撫でる獄寺。でも綱吉くんはさっきのアレクサンダー・アタックのせいでマリルを警戒している。

安心させるために僕は綱吉くんの腕を掴んでマリルの頭に乗せる。


「む、骸!」

「大丈夫ですって。ほら、いい毛触りでしょう。」

「…うん、ぬいぐるみみたい。」

「彼らはまあちょっとそっちの気がありますが二匹間だけの問題ですので。綱吉くんは大丈夫です。」

「基本はメス好きですから。」

「…そっちの気…?」


マリルを撫でる綱吉くんの手が止まる。


「雲雀には『ホモ犬』と呼ばれています。」

「よく相撲とってますが大体最後はチャックがマリルに押し倒されて終わりますね。」

「え、それって…」


実話です。













獄寺:妹でお送りしました。
中途半端ですがここでバトンは終了しています。
本当は雲雀(友人)に土産渡すとこまでやりたかったんですが仕事が山になっちまいまして

すんごい楽しかったです。骸+綱。
また機会がありましたら剣隼兎流なりきりバトンにお付き合いくださいな。

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