DAY6:続・夢の国より'08





「100分待ち…」

「シン○レラ城のミステリーツアーが無くなったからみんなこっち来るのかなぁ?」

「なんれもいい。とっとと並べよ。」


車で軽い食事を終えた僕らは園内に戻りホー○テッド○ンションの前に居る。

段々日も高くなり秋だというのが嘘のような暑さだ。


「クローム、大丈夫ですか?」

「はい…」


獄寺の持っていた日傘を借りて直射日光は避けているものの顔色が良くない。

休ませようにもこの人混み。何より夢の国を楽しんでいるのにそれを妨害するのも…

そう考えていると伸びてきた細い腕がクロームの傘をそっと取り上げた。


「クローム。傘持っててあげる。」

「え…」

「撮りたいんでしょう?写真。」


パチパチと大きな目を瞬かせクロームがこくりと頷く。

ごそごそと携帯を取り出すとアーチ上部に向けてパシャパシャとやりだした。

何を撮っているのかと思えばハロウィンの装飾に囲まれて髑髏のキャラクターが描かれている。


「…あれは?」

「ジ○ックだよ。ハロウィンとクリスマスの話の主人公。人気のキャラクターなんだ。
クロームがさっきショップの前通った時に可愛いって連呼してたから好きなんだろうな〜って。」


…しょっちゅう足を止めていたのはそれが理由か。

ひとしきり写真を撮って満足したクロームは携帯を見ながら嬉しそうだ。


「ところでこれはどういうアトラクションなのですか?」

「簡単に言やお化け屋敷だ。」

「それでこの装飾なんだな。」


窓が割れていたり墓があったり…この動物の石像も「石にされた」という設定なのだろうか。

うさぎに猫、リス…ブタまでいる。

クロームはまた携帯を取り出して熱心に石像を撮り始めた。


「ブタ可愛い…」

「…ブタ?」

「クロームはブタが好きなそうです。」


千種が眼鏡を押し上げながら呟く。


「去年の誕生日に何が欲しいか聞いたところ『ブタのぬいぐるみ』、と。」

「…そういえば骸の家にあった黒豚のぬいぐるみすごいキラキラした目で見てた。」


…知らなかった。


「見てください、10代目。アヒルです。」

「雲雀!?」

「違いますって、犬さん…あ、ホントだ〜。」


アヒルの石像を覗き込む三人。

…このアヒル見てるとなんだかあれを思い出しますねぇ…


「ア○ラック。」

「ああ、アフラッ○」

「うん、○フラック」

「アフラ〜○ク」

「…違います、骸様。」


クロームまで「ア○ラック…」と写真を撮り始めると千種は明後日の方向を向いて額を抑えた。

分かってますよ。ただあの保険のCMはどうにも印象深いものだから。






「…骸様。」

「なんですか、千種。」


建物に入りしばらく歩かされる。解説らしきものも聞き、いよいよ内部を巡る丸い乗り物に乗る、と言うときに千種に呼び止められた。


「脱落者が出そうなんですが。」

「はい?」


指を指され後ろを向くと獄寺にへばりつく綱吉くん。

ああ、やっぱり駄目だったか…


「つなよ…」

「後ろ詰まってるぴょん、骸さん。」

「……」


戻るのは後続に迷惑がかかる、か。

僕は仕方なく銀の丸い乗り物に乗り込んだ。


「あちらにはクロームもいますし、大丈夫ですよ。」

「それもそうですね…ああ、そうだ。
僕では「なりきる」のに限界があるのでこのホラーアトラクションに限り、視点は綱吉君でお楽しみください。より本人に近いリアクションを彼ならするはずです。」


では、切り替えましょう。


* * * *


「あ、骸たちどこ行った!?」

「部屋移動ではぐれちまったみたいですね。」


嘘〜!!やだやだ怖い〜!!骸と一緒なら大丈夫と思ったのに!!


「でも中変わったな〜。すっかりジ○ック仕様になってやがる。」

「前は違ったのに。」

「だよな。これなら俺がガキん時も泣かなずにすんだんだけどよ。」

「やっぱ獄寺くんも泣いたんだ…流石姉妹…同じなんだ、怖いの。」

「?何の話ですか?」

「こっちの話。」


でも今は獄寺くんかなり余裕そう。クロームに至っては頬も赤いしワクワクしてるのが丸わかり…


「俺、あの銀の椅子乗るとき真ん中にしてね…」

「?いいですよ。」

「怖いの、ボス。」

「マジ怖ぇ。」


膝ガクガクしてきた…俺はがっちりと獄寺くんの背中に組み付いて、歩くというより引きずられていく。


「……っ、10代目…首、首締まります…」

「あ、ごめん。」

「椅子来た。私、先乗るね。」

「おお。さ、どうぞ10代目!」

「の〜せんきゅう…」

「どわ!流れちまいますって!乗ってください!」


あああああ…乗っちゃったよ〜…やだよ〜…

中心で震える俺に構わず二人はキラッキラした目で周りを見ている。


「いい。二人とも。悲鳴上げたくなったら言うんだよ?俺が代わりに叫んであげる。」

「…10代目。」

「それ、意味ないと思うの。」

「もし俺が念仏唱え始めても訳わからないこと言い出してもBGMだと思って聞き流しながらエール宜しく。」

「あの、10代目。」

「既に意味不明よ、ボス。」


だって怖いんだよ〜!!


でも流れていくうちにその恐怖も無くなる。

内装が全部ジャッ○仕様になってる…

なんか可愛い感じ。同じ造りなのに全然怖くない。

獄寺くんなんて夢中になってキャラクターの名前叫びながら手を振ってる。


「ああ、○ロだ!!ゼ○!!犬なんですよあれ!ゼ〜○〜!!か〜わ〜い〜!!!!」

「サ○ー!!○リーがいる!!」

「どこだ!?」

「…何、このテンション。」


ついていけない。獄寺くんはともかくクロームの新しい一面発見、て感じだ。

二人とも選挙カーじゃないんだからってくらい手を振りまくってる…

でもこれなら俺も楽しいや。全然怖くないもん。


* * * *


「おや、どうでした?お化け屋敷は。」

「「楽しかった!」」

「…ぼちぼち。」


なんか疲労してる綱吉くん。逆にテンションの高い二人。

…中で何があったんだろうか。


「次はどうする。」

「あんま並ばないのがいいぴょん。」

「んだな…ちょっと見て回るか?」


そうですね。僕も少し疲れました。

60分かからない行列を探す。ピーターパンは60分。これはアウトだ。

メリーゴーランドやコーヒーカップはビジュアル的にいただけない、か…

白雪姫…これは35分待ちだ。


「これでいいですか?」

「「「「「異存なし」」」」」

「では決定。」






並んでる最中にパレードが通ったお陰でかなり気が紛れた。あまり待たされることなく順番が回ってきた。


「では、先に行きます。」

「バイバーイ」

「また後で。」


4人乗りトロッコなので犬と千種は前の客二人と相乗りだ。手を振って見送る。

僕らはその次のトロッコに乗り込んだ。

前に僕と綱吉くん、後ろにクロームと獄寺。


「なんか看板に怖い魔女がいるとかなんとか書いてあったんだけどよ…」

「…まあなかなか気味悪いと思うよ、あれは。」

「笑い方が変…」

「もっと変なのがいんだろ。」


…後頭部に視線が集中しているのは僕の気のせいか。

トロッコが動き出す。僕はしばらく黙って周りを見る。

…夢の国のアトラクションはこういう内容が多いのだろうか。映画を知っていればなかなかに楽しめる、か。

それにしても。


「…なんだかこの魔女の笑い、聞いていると………」

「?なんだよ。」

「クフ。」

「骸?」

「クフフフフ…」

「何笑ってんだよ、怖いよ。」

「骸様、また震えてる。」

「…気味の悪い笑いが二重に聞こえんのは気のせいか。」

「クハッ。」

「…骸。」

「クハハハハハハ!!」

「もしかして魔女に対抗してる?」

「怖ぇっつの!!黙れ!」

「骸様、楽しそう…」


楽しいですもん。






「あ、出てきた。」

「…どうした?疲れた顔してる…」

「いや、なんかステレオ笑いされて…」

「「?」」


なんだかすっきりしました。やはり笑いはいいですね!!






その後はトゥーン○ウンに行ったりパレードを見たりした後にスペースマウ○テンに乗ってラストとなった。

全員クタクタになったがそれぞれ楽しめた筈だ。

疲れたという犬だけ先に車に帰り、残りのメンバーはワー○ドバ○ールで土産を買って帰ることにした。


「どう?」

「ボス、可愛い。」

「おめーはこれだ。」

「…何やってるんですか。」


ショップに入ってすぐ散り散りに土産を物色していた筈なのだが綱吉くんたち4人が一角に固まってきゃいきゃいと騒いでいる。


「…耳?」

「ス○ィッチよ。」


綱吉くんの頭に青い耳が生えている…わけではなくカチューシャ?

クロームの頭には黒い丸い耳にメイドのような装飾。…さっきのホーンテッ○マン○ョンの係員と似たような飾りだな。


「えい!」

「わっ、やめてくださ…てめぇも離せっつの!」


そして二人に無理矢理お化けの帽子を被せられた獄寺。

千種はそんな三人をパシャパシャとデジカメで撮っている。


「千種?」

「買うのはめんどいので…写真だけ撮ろうかと。」

「つけるだけならタダだからな。」

「あははは、獄寺くん○ティッチ似合う〜!」

「ボス、マリ○ちゃん。」

「フリフリ過ぎるよ…」

「お前、髑髏なんだからこれだろ。」

「海賊よりジ○ックがいい…」

「じゃ骸はこれ!」

「!」


ボスリとかぶせられたのはハロウィン限定の騎士ミッ○ーマウスの帽子だ。

千種が目を丸くしている。僕だってまさか耳つに帽子を自分がかぶる羽目になるとは。


「似合うんじゃね?」

「骸に耳!」

「可愛い…」

「…君たち。」


パシャッ


背後でしたシャッター音に振り向くと千種がカメラを構えていた。


「レアだ…」

「…千種。」

「いいじゃん!後でそれ頂戴、千種さん。」

「綱吉くん…」


脱力感が…もういい。

帽子を元に戻し僕は本来の目的を果たすべく土産探しに戻る。


「骸、怒んなよ〜。」

「怒ってません。それより雲雀の土産をとっとと決めましょう。」

「あ、そか。雲雀さん、たしかチェシャ猫好きだぞ。」

「ほう。」


それはそれは。また実にぴったりな。


「でも結構グッズ持ってたからもしかするとかぶるかも…」

「かぶらなければいいんですよ。」

「?」


僕はさっきまで綱吉くんたちが遊んでいた区画へ戻るとそれを選び出した。


「…骸。」

「クフフ…いくら雲雀恭弥と言えどこれは持っていないでしょう。後はこれもつけるべきですか?」

「骸様、これ。」

「ああ、忘れていました。」

「………………骸。お前な。」

「クフ。どうしました、綱吉くん。」

「も、いい。」




さて、僕が何を購入したかは明日のお楽しみです。













柿ピー:母上
犬:おとん
獄寺:妹
クローム:友人 でした☆

作中に書かれたセリフ・出来事は萌要素以外、全て実際にあったことです。
キャラ用に脚色してますが大体はそのままそっくり本人のやったことです。

雲雀(友人)への土産に買ったのはチ○シャ猫のしっぽベルトと髪飾りとアームウォーマーでした(笑)

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