第一話


また面倒なことを…

俺は双眼鏡を首からかけて深い溜め息をついた。

リボーンから出された課題は守護者の観察。

でも観察ったって山本はいつもつるんでるし獄寺くんはむしろこっちが観察されてる気がするし。

お兄さんは観察するまでもなく極限だし常に死ぬ気だし…ランボは毎日面倒見させられてるし第一リボーンはランボの観察日誌なんて出したところでごみ箱スルーしそうだし…


「当たり前だろ。観察する価値があるっつったら当然該当者はあいつらだけだ。」

「…そーですよね…」


俺の顎の下からサファリルックで望遠鏡を覗いてそう先生は宣っている。

ターゲット発見、と笑う先には南国果実を思わせる髪型の少女。

雲雀さん観察の次は骸ですか…まあ予感はしてたけど。

しかしビルの屋上から腹ばいで身を潜めて双眼鏡は如何なものだろう…


「これ端から見たらとても怪しくは御座いませぬか、てぃーちゃー…」

「何事も格好からが基本だぞ。」

「これ観察っつーより覗き…それにクロームじゃなくて骸対象なんだろ。これじゃ意味ないんじゃ…」

「だから私が呼ばれたの、ボス。」

「!!」


ガバリと隣を見れば同じく腹ばいでこちらを見ている眼帯美少女。俺は声もなく文字通り飛び上がった。


「く…くくくくくくっ…!!」

「何笑ってんだ、ダメツナ。」

「な、なんで!?今あっち歩いて…!?つうか瞬間移動!?」

「俺が呼んだんだぞ。」

「なんで!」

「骸なんて観察したところで煙に巻かれるのがオチだからな。それなら本人に近いヤツに聞いた方が早いだろ。」

「ならこの双眼鏡の意味は!?」

「気分だけでも盛り上げてやろうと思ってな。」

「余計な気遣いだー!!!!」


悪辣な笑みを浮かべる赤ん坊。いやだ、こんな一歳児…


「なんだ、骸を直に観察したかったのか?いろんな意味で経験値アップ間違いなしだが…同時に失うものもでけぇぞ?」

「いや、いい。クローム協力の元穏便に事を済ませたい。」

「そうだなまだダメツナには早い。そのうち、な。」


そのうちもなにもない。俺は我が身が可愛いから出来るなら二大巨塔には近付きたくない…





「それじゃ、何から話せばいいの?」


屋外は今の時期まだ寒い。

平気な顔をしているとは言えへそ出しのクロームをそんな所に長時間居させるわけにもいかず。

俺達は手近なファーストフード店に場所を移していた。


「何からって…まあ普段の骸を…」

「普段?」


クロームはピーチティフロートを手に小首を傾げる。ぱちくりと瞬きをする様はなんだか子猫のようで可愛らしい。


「例えば好きなものとか…趣味とか。」

「弱点とか弱みとかバラされたくない秘密とか…」

「ってそれが目的かよ!!」


お子様椅子に座りポテトを咀嚼していたリボーンにツッコミをいれた。

こいつはいっつもこんなんばっかだな!!第一クロームがそんなこと答えるわけがないって。


「…骸様はツンデレなの。」

「え。」

「千種がそう言ってた。」


…何教えてるんだ、柿本千種。ツンデレって。あの人まさかオタク…か?


「それで制服フェチなの。」

「ふえ!?」


いたいけな子に何教え込んでるんだ!!


「って犬が。」


城島犬、お前もか!!


「それでチョコレートが大好きでパイナップルの花言葉がお気に入りで可愛いものを抱き締めたいくらい愛してるって。」

「抱きっ!?」

「今一番のお気に入りはカピバラさん…私も好き。」

「……」


し、知りたくなかった意外な一面!!

確かに可愛いけど!!抱きしめたくなるのも分かるけど!!

む、骸ってもっとこう、クールなヤツじゃなかったか!?なんかイメージが総崩れだ…

口には出さないけどすごいかっこいいイメージだったんだけどな…


「そ…そうなんだ…」

「?ボス顔色悪い。」

「いや…あはははは…」


ぬいぐるみに頬摺りする骸を想像したらちょっとぞっとした。








続く…





next→