第一話


「…リボーン。これいい加減止めないか…」


俺はまたまた腹ばいの態勢でうんざりしながら呟いた。

額を突き合わせて下を見ていた赤子が顔を上げた。


「偶にはいいだろ。」

「偶にも何も俺に覗きの趣味はないっ!」

「あんまデケェ声だすな。感づかれるぞ。」


今日のリボーンは忍者ルック。

そして俺たちがいるのは暗闇の中。

リボーンと俺の間に空いている500円玉大の穴。

そこから入ってくる光だけがお互いを認知できる唯一の明かりだ。


「大体雲雀さんはこないだやったじゃん!」

「ヒバードと戯れる雲雀も確かに意表をつく貴重な一面だがな。俺が知りてぇのはヤツの日常だ。」


そう。

俺たちは今並盛中の応接室の真上にいる。

どこぞの有名ミステリーであったように屋根裏(?)からこれまた怒られそうだが穴を空けて応接室を覗いている。

雲雀さん観察レポート再び、である。


「でも肝心の雲雀さんがいないんだけど…」

「もう少ししたら戻ってくるぞ。」


やけに自信たっぷりだな…

穴を見ているのに疲れた俺は身を起こした。も〜、ずっと片目だったから目、痛ぇ…肩も疲れるし。

ぐるぐると肩を回しているとブレザーのポケットがブルブルと震え出す。

携帯…あれ、着信?番号を見ると千種さんからだった。

カピバラの時からちょっと黒曜組とも仲良く(骸は相変わらず怖い)なったのでお互いにメアドと携帯番号は交換しあっていたのだ。


「千種さん?」

『沢田。』


携帯に出るとちょっと焦ったような声が聞こえてきた。


『沢田、悪い。』

「へ?」

『今何処だ。』

「学校ですけど…」

『逃げろ、今すぐ。並中は駄目だ。いやむしろ並盛から出ろ。』

「ええ!?」

『とにかく雲雀恭弥の領域から出ろ。』


…まさにその領域の心臓部の真上にいるのですが。


「待ってください、ちく…」

「ミツケタ。」


聞き覚えのある可愛らしい声。

背後を慌て振り向くと黄色の小鳥がそこにいた。


「サワダツナヨシ、ミツケタ。」


パタパタと俺の頭まで来るとぽすりと着地した。

「ミツケタ、ミツケタ」と楽しそうに囀っている。

こいつ…いつ見てもおにぎりにして転がしたい可愛さだよな。


「…巣だと思われてんじゃねぇか?」

「…………」


それは嫌だ。


「にしてもこいつ…どっから入って来たんだ?ここには俺の作った出入り口からしか入れないはずだぞ。」

『…そこにバーズの鳥がいるのか?』

「え、あ、はい。」

『……ヤバい』

「へ。」






『バーズの鳥には小型カメラが付いてるんだ。』






「え。」


ドゴン!


俺が間の抜けた声を上げた瞬間、床に振動が走った。

と思った瞬間床が喪失する。落ちる…!!!!


「あぁあぁぁああ!?!!」


ヤバい!!叩きつけられる!!

俺は衝撃に備え目を堅く閉じた。

しかしドスンという音はするが差ほどダメージは感じなかった。

よかった…たまたまソファーが下にあったのか。

しかし安堵した俺の上に誰かが覆い被さる気配。

恐る恐る目を開けると


「やあ」


やっぱ出た…!!!!眉目秀麗冷酷無比霊長類最強の風紀委員長様!!

上を見上げれば俺の居たところだけ天井が四角く開いていた。

リボーンがそこから顔を出している。珍しく苦い顔を浮かべていた。


「こんなところに抜け穴作るなんてやるね、赤ん坊。」

「ふん。それを見つけ出すなんてお前もなかなかやるじゃねぇか。」


なんだろう…この二人、ひ、火花散ってない?

俺がいたたまれなさに身動くとトンファーが首に突きつけられた。そしてキロリと睨みつけられる。

うっ…もしかしてとっても機嫌が悪い…!?


「ねえ、赤ん坊。この子今日1日貸してよ。」

「…あ?」

「僕もこれで遊ぶから貸して。」

「…どうしたんだ、急に。」

「何?六道はよくて僕は駄目なわけ?まさかそんなわけないよね。」


パカッと携帯を開く雲雀さん。俺に向けられた画面に移ってたのは。

骸が幸せそうにカピパラごと俺を抱き込んで頬摺りしているあの画像だった。


「〜〜!!!!」


なんで雲雀さんがそれ持ってるの〜!?









続く…





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