・なんか、足取り軽くない? なんか、千種さんの足取りが軽快な気が… いつももっと億劫そうに歩いてるのに。 俺がじっとその姿を眺めていたら流石にあちらも気づいたらしい。 スタスタと真っ直ぐこちらに向かってきた。 「沢田。」 「こんにちは。千種さん、なんかいいことありました?すっごくルンルンに見えるんですが…」 ぱっと視線を外して眼鏡を押し上げる。 ……なんか、怪しい… 「なんでだ?」 「いや、なんとなく…」 「…………沢田の家はあっちだった。」 「へ?」 ピシリと俺の後ろを指差し何故か今更なことを呟く千種さん。 どしたんだ、突然…何度も行ってるじゃないですか。 「違うか?」 「…そ、ですけど。」 「こっちに来たってことは用事があるのか?」 「いえ。単に寄り道しようかと。」 「長くかかるか?」 「へ……いえ。ちょっとブラブラしたかっただけだし。」 「そうか」と呟き黙り込む千種さん。 何か悩んでる?眉間に珍しく皺がよっている。 千種さんは地面をしばらく見ていたがチラリと俺を見て次に時計を確認して「よし」と呟く。 「俺も行く。」 「へ…」 「長くなると大変だからな。」 「?」 ……何が?
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