祝ってあげようか。






「ふあ〜…」


夜更かししてゲームしてたから眠い…

う〜ん、と伸びをして人の少なくなった教室の黒板を見る。

10月14日(火)。俺の誕生日だ。

でも毎年家でケーキを食べる以外特別なことはないからなぁ…去年は前日に酷い目にあったけど…

HRの終わった教室を見渡して俺は溜め息をつく。

…今年は言ってもらえるかと少し期待してた。でも山本も獄寺くんも欠席してて今日はひとりだけだ。ちょっと残念。

他に俺の誕生日知ってる人間なんていないしなぁ…………………………………帰ろ。

こんなトコでぼうっとしてるより今頃家でささやかな誕生日パーティーの準備をしている母さんとチビと居た方が楽しいし。

俺は鞄を肩に引っかけるとクラスメートに手を振って教室を後にした。

廊下を歩きながらブレザーを脱いで手で顔を仰ぐ。もう10月だってのにまだ日中は暑いよな〜…こういう時学生って夏冬指定されてて嫌だ。

そう言えば雲雀さんも一応衣替えどおりに夏冬の制服着てるよな。

骸は………………………あれ、あいつ学ラン姿しか見たことないぞ、制服。

ってか黒曜に夏服はあるのか。クロームの夏服とか凄い気になるんだけど…

そんなくだらないことを考えながら昇降口で靴を履き替える。

…これ靴底すり減ったよなぁ…新しいのそろそろ買ってもらお。最近雨の日とかよく滑るもん。危ないし。

校門に向かいながら携帯を開く。珍しく獄寺くん、何にも言ってこないなぁ…休む時は大体謝罪メールを(学校じゃなくて)俺に入れてくるのに。山本もなんだか無断っぽいし。


「あ。」


今見たらストラップの先にあったヘッドがない。月を背景に狼の影が彫り込まれた板のヘッド。

校外学習で山本と獄寺くんとお揃いで買ったのだったのに…


「なんか今日ついてないかも…」


俺は盛大に息を吐き出すと校門から外に出た。



・寄り道しようか



・真っ直ぐ帰ろうか