DAY3:移動!





東京駅の地下鉄からJRの連絡通路を全力疾走中。

キャリーバックってのはこういう時は邪魔だ。ガラガラうるさいし。


「雲雀さん、切符は!?」

「君のフードの中。」

「へあ!?あ、ホントだ…ってなんでそんなとこに!?」

「無くしたら大変だと思って。」

「思った結果がこれ!?」

「文句は電車間にあったらいくらでも聞いてあげるよ。」


改札をキャリーと綱吉を抱えて通り抜ける。これ始めから綱吉カバンに詰めとけば良かったかも。

エスカレーターを駆け上がり出発間際の新幹線に飛び込む。


プシュー…ッ


「ま、間に合った…」

「ギリギリだったね。」

「おや、品川で乗ってくるかと思ってましたよ。」

「「!」」


すぐ脇からした声にそちらを向くと三人掛けシートの窓側でカタカタとノートパソコンを弄る六道骸がいた。

掛けている縁無し眼鏡を押し上げこちらを見上げる。


「骸!?」

「どうも。君らだけでは不安ですので僕も津まで同行しますよ。」

「へ?一緒に?」

「はい。まあ正確には一人暴走しそうな某ヒバニャンのストッパーなのですが。
アルコバレーノに聞きましたよ…君、昨日駅内で綱吉くん追い回して駅員三人ほど昏倒させたそうじゃないですか。」

「日課だから仕方ないじゃない。」

「そんな日課必要ないでしょう。」


あ〜あ。余所と違ってこの六道骸はつまらない。踏めないし。

綱吉はぽすりと座席に座ると骸のパソコンを覗き込む。

僕も通路側に座って綱吉の頭を肘置きに画面を覗く。


「何見てたの、骸。」

「僕らのサイトですよ。そろそろ10万hit企画を考えないと。」

「企画かぁ。」

「企画いいけど連載も進めなよ。」

「mixi内で遊んでる男に言われたくないですよ…あのバトン、君が書いてるのバレバレです。なんで綱吉くんのIDでログインしてるんですか、君。」

「パスワード忘れた。」

「請求なさい!」

「あ〜、もう!!喧嘩するなら隣に座ってください!!」

「「やだ」」


抜け出ようとする綱吉を抑えつける。骸は片腕で綱吉の腰をがっちりと捕まえている。


「ふぎゃ!!」

「いいからここいなさい。最近雲雀とばかり行動してるでしょう。いい加減僕とも遊んでください。」

「しょうがないじゃん!!雲雀さんリク多いんだもん!!」

「何言ってるのさ!僕とも遊んでくれてないよ。綱吉が夏の間一緒にいたの僕と同じ見た目の幽霊じゃないか。」

「重い重い!!雲雀さんも骸も引っ付かないで!!」


べりべりと僕らを引き剥がし綱吉が叫ぶ。
まだくっついてたいのに…


「今は駄目です。後で!後でね!」

「…分かりました。」


骸は不満げに綱吉を見ていたけれど渋々引き下がるとまたパソコンに向き直った。

僕はそのまま組み付いていると綱吉にぺちぺちと腕を叩かれた。


「雲雀さんも骸見習ってもう少しまともな人間になってくれると助かるんですが。」

「僕のどこがまともじゃないのさ。」

「「まとも以前に人間じゃない。」」


………君らね。

あんまりきっぱりくっきり言い切るから咬み殺す気も起きない。

むくれてシートに寄りかかる。


「今回の仕事は?」

「子ども向けのお話広場だって。」

「津だけですか?」

「ううん、明日津で本番、その後滋賀に行って明後日本番、で東京帰り。
そうだ、聞いてよ骸!この舞台にね、なんと元祖のび太の声優さんが出るんだ!」

「元祖…というと、まさか小原女史…?」

「そう!」

「何それ、聞いてないよ。」


ガバリと身を起こす。

そういえば綱吉は稽古見に行ってたもんね。


「雲雀さんは興味無いかと思って。」

「まさか!元祖だよ?会ったの、綱吉。」

「はい!挨拶しましたよ。そしたら『私、今目の下隈凄いから照明たくさんあててね』って。お茶目な人でした!」


……ちょっと羨ましい。


「それは気合い入りますね〜。」

「他にもまだ新人の声優さん5人と歌のお姉さんが出るんだけど結構面白いよ。」

「ふうん?」


ツアーなんて面倒くさいと思ってたけど今回はちょっと楽しくなりそうだね。












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