DAY4:終わった。





「骸、お疲れ〜。」

「お疲れ様です。」


帰りの地下鉄に乗り込みぐったりとした骸に綱吉が労いの言葉をかける。

怒涛の2日間だったから仕方ない。

夕方に舞台は終わってもその後必ず飲み会があるものだから僕らは休まる間も無かった。


「疲れました…」

「でもキャストさんと話せて良かった!」

「そうですね。こういう仕事はあまり表の人と交流ありませんし。」

「交流と言えば、今日気付いたかい?狼の。」

「ああ!あれですよね!」


綱吉が楽しげに手を叩いた。


「お話広場」はその名の通り絵本を読んで聞かせてキャストがそれに合わせて芝居する舞台なんだ。

キャストは小原女史と司会者兼歌のお姉さん、そしてフェアリーズという5人の声優陣。彼らはまだレギュラーは持っていないらしいけど個性的でなかなか面白い。

その中の黒一点である白鳥氏と飲み会で盛り上がってね。彼はスタッフの飲み会に参加したくてキャストの飲み会を『ドロン』してきたらしい。

その話を聞いて僕らの間で「忍々」のポーズが流行ってたんだ。

そしたら彼は『今夜は食べほうだい!』という絵本で狼をやっているんだけど踊り狂うシーンで忍々のポーズを本番中にやってくれてね。

思わずピンルームで吹いちゃったよ。


「『あそこでやるか!?』って骸が大笑いしてました。」

「綱吉君なんか咳き込んで笑ってたじゃないですか。インカム越しに丸聞こえでしたよ。」

「面白かったんだもん。またこの仕事したいですね。」

「まあね。休まる間がないけど。」


なんたって新幹線の中でも飲み会だったから。眠れやしない。


「綱吉人気だったね。若い若いって。」

「な!雲雀さんも大して変わらない扱いだったじゃないですか!!」

「若さですねぇ。」

「「お前もだろ!!」」


新幹線の中で肌が綺麗だとかで綱吉は撫でくり回されてたし、骸は若いのに言動が明らかに老けているって話題の中心にいたし。

僕は素知らぬ顔で寝てたんだけど気付いたらワイン入ったコップ渡されて真ん中の席に座らされていた。

普段なら「煩い」って咬み殺すけどなんたって将来有望な声優陣だよ?傷なんかつけられるわけがない!

まあ楽しくはあったよ。偶には悪くない。


「雲雀さん、今日の事日記にあげないんですか?」

「疲れた。」

「昨日もそう言ってサボったでしょう。自分で言い出したんだから書きなさい!」


骸にでん、とノートパソコンを渡されて渋々Windowsを立ち上げる。

夏休みの宿題をやれと親に迫られる小学生の気分だ。やられたことないけど。


「面倒臭い…」


カタカタとキーを打ちながら今日あったことを文章に起こす。なかなかしんどい…
あ、そういえば。


「綱吉、歌のお姉さんとフェアリーズの写真撮ってたよね。」

「携帯ですけど…」

「載せる。ちょうだい。」

「じゃメール送ります。えと…」


カチカチと綱吉が携帯操作をしている間にメールボックスを開く。


「フェアリーズと言っても一人いませんでしたよね、確か。」

「新幹線乗り遅れたとかでね。大丈夫だよ、変わりに座敷童一匹写ってるから。」

「ざしき…」

「今送信しました〜。」

「ん…ああ、来たよ。」


日記に貼り付ける。携帯だから画面が小さいけどまあ、雰囲気が伝わればね。

にしても。


「電波悪いな…」

「地下鉄ですからね。でももう着きましたよ。」


顔をあげれば最寄り駅だった。キャリーを引きずり電車を降りる。


「…なんかお腹空きません?」


改札を抜けたところで綱吉が呟いた。

そういえば飲んでばかりで食事はしてなかったね…


「行きますか?ラーメン屋にでも。」

「いいんじゃない?」


取りあえず、空腹を満たそう…

日記をあげるのはそれからね。


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