DAY2:午後からまったり





「終わった〜!!」


綱吉くんが銀座駅入り口で伸びをしながら叫ぶ。

現在、午前11時。なんともう今日の仕事は終わりだという。まあその代わり朝7時半入りでしたが…


「仕込み大変な現場もイヤだけどさ、今日みたいなただ待ちの現場もイヤだよな…」

「チーフ一人で徹夜仕込みしてしまうからやることありませんでしたもんね。」


僕らは3時間半暇で仕方なかった。店のオープンまで居心地が悪くて悪くて。

解放されると即座に僕らはビルを飛び出したのだ。


「なあ、この後どうする?帰る?」

「帰って寝る、と言いたい所ですがそれも勿体無いですよね。」


地下に潜り改札を通り抜ける。どうせ丸の内線を使うのだから…


「池袋行きます?朝食も食べ損ねたことですし。」

「いいけど…お前さっきまで腹痛いって。」

「治りました。」

「…あそ。」


なんですか。ストレスで痛くなるんですよ、仕方無いでしょう。

ホームに滑り込んできた電車に乗り込み座席につく。

座って気がついた。足がだるい。ずっと立ちっぱなしだったからか。


「骸、バトン反応どうだった?」

「まあ、それなりに。」

「どれどれ。」


ごそごそと僕の上着を漁り綱吉くんが携帯を取り出す。

客が少ないのをいいことに足をぴょこぴょこさせながらmixiを開いている。

…行儀悪いですよ。


「おわ。どこが「それなり」だよ。」

「それなりでしょう、雲雀ほどじゃない。」

「お前なあ…返事は。」

「そういえばしてませんね。」

「ったく仕方ないなぁ…」


カチカチと綱吉くんが返事を書き始めた。

しかし僕の携帯のサイズが彼には大きいらしい。両手で文字を打ち込んでいる。


「…ちっちゃいですねぇ。」

「うっさい。これから伸びる。父さんだってもっと高いし。」

「でも君母親似でしょう。」

「う…」


あ、苦い顔してる。






「3階だっけ。」

「ええ。」


池袋サンシャインで昼食をとったあと真向かいのアニメイトに入る。

新しいアンソロ(内容は言わずもがな)がでているはずだ。

案の定五冊も目の前の彼がメインのアンソロ新刊が棚に並んでいた。


「俺が居るところで買うなよ…」

「いいじゃないですか。糧が無いと新しいネタも浮かばないんです。」

「そーかよ…」


文句を言いながらも後をついてくる綱吉くん。

興味はあるみたいですね。

僕は本を片手にレジカウンターに向かう。

すると買ったアンソロに特典がついてきた。

二枚のポストカー…


「こちらが特典と」

「「いりません。」」


二枚ついてきたポストカードの一枚目を見て綱吉くんと僕の声が重なった。

少し驚いた顔を店員はしていたけれどそれどころではない。


なんで27受けアンソロ買う客にディノヒバのポストカード差し出すんだ…全力でいらない。


それにそんなカード雲雀に見つかってみろ…僕らの身が危ない。

商品だけ受け取ると僕らは足早に店を後にした。


「前もやられたよな…」

「ええ…あちらも人気なのは分かりますがそこは区別して欲しいですよね…」


時計を見ると13時。まだ帰るには早い時間だ。


♪〜


「あ。俺だ。」


綱吉くんの携帯が鳴る。この音はメール?


「誰からですか?」

「雲雀さん…あ!」

「どうしました?」

「イラストっ!!りつさんからイラスト来てる!!」


嬉しそうに携帯を差し出され画面を覗くとサイトにも掲載している「鬼の鏡」の冒頭シーンの挿し絵が表示されていた。


「すごいっ!!この『恭弥』の表情とか。鎌とか!!」

「ほう。雲雀が挿し絵OKを出した理由が分かりましたよ。」


りつ氏のイラストは雲雀と綱吉くん、そして鬼の『恭弥』を見事に描き出していた。

これはまた。僕も描いてもらいたいものですね。


「骸!ネットカフェ行こう!!今すぐこれアップする!!」

「ちょ、綱吉くん…!」


僕の腕を掴んでぐいぐいと引っ張る綱吉くん。興奮して人の話を聞いてない…

嬉しかったんでしょうねぇ。まあ分からないでもない。


「綱吉くん、急がずともイラストもサイトも逃げませんよ。」

「いいから早く〜!!」


やれやれ…

このままカフェに引きこもることになりそうなのでここで失礼します。












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