第二話






あ、2分たった。

あちこち鍵を閉めて回るのを止めて逃げることに専念する。

こんなことしても雲雀さんならすぐ壊してくるだろうけど今日は武器無しだから時間稼ぎにはなる。

……はず。


「は〜…順応してる俺がいる…」


まあピカソやダリ並みの個性溢れる人員のなかで生き抜いていくには仕方ないことだけど。

俺は理科準備室に飛び込んだ。

理科室と準備室を繋ぐ扉に鍵をかけてバレない程度に戸棚を扉が開かないよう移動する。

二つの教室を繋ぐ窓の鍵を開けて最後に準備室にも鍵をかける。

これでよし。

理科室から外にでると3階に上がった。

リボーンの抜け穴は確かこの辺りにはなかったはず。

曲がり角まで一気に走って壁に張り付く。

気配はない。

俺はそうやって廊下を進み、音楽室に入る。

音楽室にも理科室と同じことをして今度は渡り廊下に向かう。

ちょっと危険だけど渡り廊下の中程で身を屈めてそっと階下を見る。

二つの校舎を見るにはこれが確実だ。

但しこっちがみつかる可能性も高いけど。


「!!いた…」


俺たちのクラスがある棟の二階に黒い学ラン。

と、何か感じたのか漆黒の人が振り返る。

やべっ!!

俺は慌ててしゃがみこんで視線をやり過ごす。

ホントあの人、野生動物並みに勘がいい。

そろりと顔を出せばそこにはもう雲雀さんはいなかった。

……………………ヤバい。

踵を返し特別教室の棟に飛び込む。

そうして脇の消火栓に体をねじ込んだ。

初めて入るけどここもリボーンの隠れ家なのでどこかに繋がってるはず…

消火栓の扉を閉めたと同時にぞわりと背筋に何かが走る。

おそるおそる小さな穴から外を見れば目の前を走り去る雲雀さん。

…間一髪。

俺は携帯のランプを点灯すると暗いトンネルを進んだ。

…にしても。

これ誰が作ったんだろうか。

まさかリボーン?

いやいくら不可能の無い赤ん坊でもなぁ…

業者が入ったんなら雲雀さんが知らないはずないしきっと黒いスーツの方々とかが作ったんだろうなぁ…お、灯りだ。

俺は光の方へ進んでいく。

すると。


「…応接室?」


またとんでもないとこ出たな…でも四つん這いで進んでたからちょっと首つらいし…いいか。

ずるりと這い出る。

戸棚のガラス扉に繋がっていたらしい。おれは狭いそこからなんとか抜け出した。

応接室は特別棟の二階。

さっきよりは雲雀さんと離れたはず。

そぉっと扉を開く。

…うん、気配はない。

特別棟の階段を4階まで駆け上がる。


「!!」


4階に着いた途端に走る悪寒。

…これは、いる。長い廊下をそうっと覗いてみる。姿は見えない。

時計をみるとまだ30分も経っていない。

タイムリミットまでかなりある今、あの人と対峙するのは遠慮したい…

そろりと後退する。







しかし。








とん。


「!!」






「見 い つ け た」







自分で喉がヒュッとなるのが分かった。

肩に乗せられた手を振り払って振り向けば。

うっそりと笑う傾国に黒と白のコントラスト。

夕日に相まって恐怖が増大する。


「もう終わりでいいの?」


すうと伸びる腕に怯えたように数歩後ずさる。

…フリをする。

俺もただやられてばっかじゃないんだ!!

雲雀さんと距離をとる。

彼が一層笑みを深くして一歩踏みだそうとしたその瞬間を狙って雲雀さんの腹めがけてタックル。

体重移動しようとする瞬間、しかも片足の状態ならばいくら雲雀さんでも…っ!!

案の定態勢を崩し仰向けに倒れ込む。

俺は素早く立ち直ると廊下の反対側に向けて疾走する。

向かうは図書室。

運動神経じゃ俺は雲雀さんには絶対に勝てない。

振り切るのは不可能。

なら、障害物の多いところへ誘い込んで撒くしかない!

俺が唯一雲雀さんより勝ってるのは直感だ。

素手の今俺の武器はそれだけだ。

タイムリミットは残すところ40分。

長い長い俺の放課後はまだ終わらない…








続く…





←back■next→