第五話






「…ん、そういえば…」


恐怖に負けて逃げ出したけど…

これって「ルール改変でゲーム続行」を選んだことに…もしかしてなる?

絶対にこのルール改変はヤバいと思う。

だって雲雀さん、激怒りしてたもん。

絶対俺が逃走不能なルールにしてくると思う。


「…何やってんだ、俺…」


選べって。

逃げても捕まってもゆくゆくは罰ゲームなのでは…

はあ〜…

走りながら溜め息が出てしまう。


ピシッ…


「げ…」


鞭の音!?ど、どこから…

反響するので音の出所が分からない。

それに日が落ちてきたので辺りも暗くなってきている。

とにかく俺は行き止まりも困るので階段の踊場に身を潜める。


「そういえば時間…ってもう関係ないか。」


多分、あの様子じゃ一時間経過しても帰してもらえるはずがない。

ここからは無制限。

俺が捕まるか、

第三者の――例えばリボーンの――介入が入るか、

雲雀さんをどうにかして俺が逃げきるか…


「…………いや、最後はあり得ないな。」


でも。

黙って捕まる気はない。


ピシリっ…


「小動物、いるんだろ?」


上階から声がする。

俺は暗闇に身を潜めながらそろそろと下の階に移動する。

雲雀さんに追ってくる気配はない。


「ルールを変えよう。武器は使用禁止。自分のはね。

君も僕も校舎から出てはいけない。このゲームから逃げ出してはいけない。

最後まで耐えられれば日常に戻してあげる。

ルール違反はおしおき。時間は僕が飽きるまで。」


ぞくり。


上を見上げると手摺りに肘をついてこちらを見下ろす並盛の支配者。

目が合うとにこりと微笑む。

怖い。


「ほら、逃げなくていいの?」


クスクスと楽しそうに笑う彼の人に俺はぞっとした。

な…何する気だろう…この人。


「逃げないならいくよ。」


俺は慌てて踵を帰すと階段を駆け下りる。


でもそれと同時に体に何か絡みつく感触。


「あああっ!」


そのままズルズルと引っ張られて倒れ込む。

階段を引きずられた痛みに動けないでいると頭の脇に誰かが立つ気配。


「でも、鬼ごっこは飽きちゃったから違うことして遊ぼうか。」

「違う…こと…」

「そう。」


拘束されたまま俺は雲雀さんの肩に担ぎ上げられた。

暴れようと身を捩ると鞭が締まる。


「あああああ!!」

「抵抗しないの。いいんだよ、僕は君の骨を折っても。意識さえあれば遊べるからね。」

「や…やめて…!しない、から!!暴れないからぁ!」


ぎしぎしと体が軋み肋骨が圧力の限界を訴えているような気がして俺は叫ぶ。

途端に雲雀さんは手を離しぽんぽんと俺の背を叩いた。


「分かればいいんだよ?」


* * * *


保健室に着いた。

鞭をほどき乱暴に子ネズミをベッドに放る。

あの医者の私物が入った棚を漁り、ファー付きの手錠と鎖の長い変わった形の手錠を取り出した。

応接室でも良かったんだけど、こっちの方がいろいろ充実してるからね。

何があるかは大体分かってる。

何せここにあるのは没収品を僕があの医者にやったのばかりだからね。


「ひ…ばりさん…それ…っ」

「ああ、心配しなくていいよ。拘束が目的じゃないから。

これからするゲームで君がズルしないようにね。」


シャラ…カチャン…


「ズル…?俺、逃げませんっ!だからやめて下さい!」

「逃げる?何を言ってるの、君にそんな選択肢は無いよ。」


カチャン…


「言ったろう…?耐えられたら、日常に戻してあげる。」

「耐え…る?」


ベッドの格子に鎖を通しているので腕を頭上から下げられない。

小動物は不安そうに僕を見上げる。

………楽しいなぁ。


「これから僕は君の体で遊ぼうと思うんだ。

ここには面白いものが沢山あるし、僕トンファー以外の武器にも興味あるんだよね。

でも、君は痛くてもくすぐったくても悲鳴や意味をなさない声を上げてはいけない。」


カチャリ


筆立てからカッターを取り上げる。

キリキリと刃を出せば青ざめた顔になる。

僕はベッドに腰掛け獲物が向きを変えないよう、上から抑えつける。

そうしてシャツの上からカッターをゆっくりと押し当て切れない程度に腹まで刃を滑らせる。

目に見えて震え出す体。どくどくと激しくなる鼓動。

猫になった気分だよ…

食らう前に捕らえたネズミで遊ぶあの残虐な行動。

あれはきっとこんな心情なんだね。


「こえ…だ、したら…っ…?」


…まだまだ反抗的な光の消えない目。

逃れられる気でいるんだ。

まあいい。希望を持っている方がいじめ甲斐がある。

手の中に捕らえた小さい生き物が逃れようともがく姿は哀れで…僕の手で息を止めるその瞬間が愉しい。


「ああ、罰ゲーム。

そうだなぁ……普通なら体感することの出来ないある事を君に教えて上げる。」

「?」

「知ったらもう逃がさない。君はずっと僕の相手をして貰うから。」


きょとんとした顔。

分からないの?全くいよいよ楽しみじゃないか。

君にようやくかぶりつけると思うと気が高ぶる。

カッターをシャツのボタンの下に差し込む。


ブツッ



ひとつ。



ブツッ



二つ。



ブッ



三つ。



ボタンが飛ぶ度に揺れる体。

半分取れた所で薄い腹に手を這わせる。

震えてる…ああ、ぞくぞくする…

続けて全てのボタンを切り取る。

象牙色と言うの?綺麗な肌。

感触も滑らかで気持ちいい。

勿体ないから傷は付けないようにしよう。


「雲雀さん…何、するんですか?」

「どうしようか。……君綺麗な肌をしているね。……………全身見たいな。」

「えっ」


カチャ…シュルっ


「ひ、雲雀さんっ!?」


ベルトを引き抜く。

僕の意図に気付き足を曲げて抵抗する子ネズミ。

…意味ないよ。

下着ごとズボンを脱がせ上履きも靴下も剥ぎ取る。


「やだ!いやだ、見ないで!」

「なんで嫌がるの?」


綺麗なのに。

性器も小さくて可愛い。

桜色の胸の突起に指を滑らす。


「んっ!」


びくんと体が揺れた。

…これぐらいじゃ駄目か。

不意打ちすれば声あげると思ったのに。








続く…





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