第五話






「…標的を変えた、と言うわけですか…」

「子兎に噛みつく前に邪魔されてばっかだからね。親兎殺しとこうかと。」

「誰が親ですかっ…!!」


この男〜…もっと深い悪夢を見せとくべきでした…

綱吉くんが少し離れた隙に今度は僕に喧嘩を吹っかけてきやがるとは……おっと言葉遣いが。


「だってあの子の懐き方見てるとそう思わない?」

「懐かれない貴方よりマシですよ!」

「それはおいおい調教するからいいんだよ。」

「小綺麗な顔してるくせに意外と変態発言多いですね。」

「僕は自分に正直に生きてるからね。」


ガキンッ!!ガッ!!


「っていうか君こそなんなの、なんであの子の護衛とかしてるわけ?敵だろ、敵。」

「…元ですから。今は貴方のが敵キャラですよ。」

「ちゃんと守るさ。敵からは。」

「貴方が一番危険なんですよ!」

「…思ったんだけど君、性格変わってない?キャラじゃないよね、こういうの。」

「何を今更。」


キィン!ジャキっ!ガキィッ!!


「あとさ、その髪似合ってるよ。それ標準にすれば?」

「没個性は僕の心情に合わないものでね!

貴方こそその学ランお似合いですよどうせなら髪型も皆さんとお揃いにしては如何ですか?」

「僕は童顔過ぎてああいう男らしいの似合わないんだよ。

むしろ君のが似合いそうじゃない、試してみようよ。」

「遠慮しときます。

大体僕のようなひ弱な優等生顔にあのワイルドな髪型なんてとてもとても。」


ガンッ!ガガッ!ギィン…!!


「童顔てそういえば貴方いくつなんですか。

ぶっちゃけ凄い気になってるんですよね、マジで。」

「君こそ年サバ読んでない?ホントに10代なわけ?

子兎と並ぶとすんごいことになってるよ。同い年くらいにはお互い見えないよ。」

「あの子が幼すぎるんです!」

「それは同意見だけどさ!!」



…埒があかない!!


* * * *


「それでそんなになってるわけ。」

「感心してないで千種達呼んでください…僕はもう駄目だ…」


廊下で仰向けに倒れてる骸と50m先でうつ伏せで倒れてる雲雀さん。

二人とも無傷なのに完璧にへばってるよ…

雲雀さんなんか声も出さないし。

俺がトイレに行ってる間に消えた骸はどうやら3時間あちこち移動しながら雲雀さんと打ち合ってたらしい。


「俺今ものすっごく珍しいもの見てると思うんだよな…」

「なんでもいいです…写メでもなんでも撮るがいいですよ。今日は店仕舞いです、お疲れ様でした。」

「骸?お〜い。帰ってこい。訳分かんないぞ?とりあえず携帯借りるからな?」


ゴソゴソとブレザーを漁る。

骸は指一本を動かすのも億劫らしくされるがままだ。眼鏡割れてるし。


「あった。え〜…と…柿本、「か」…」

「千種は「ち」で登録してます…」

「簡略化しすぎだろ。」

「一発で出て楽なんですよ。」








数十分後―――


「…骸様、か?」

「本物びょん?」

「まともな格好してるけど骸です。」

「君たちは僕を何で判断してるんですか…」


髪型。

そう答える二人の心の声が聞こえてきたきがする。

後で聞いたけど二人ともこの時まであの独特な髪型を下ろした骸を見たこと無かったらしい。

千種さんなんか無言で写メ撮ってるし。

「レアだ」とか感激してるし。


「回復したら覚えてなさい、千種…」

「目に線入れときます。」

「ならいいです。」


いいんかい。


「立てますか。」

「…なんとか。肩を貸しなさい。」

「辛いなら背負っていきますが。」

「そんな姿を晒せますか!いいから肩を貸しなさい!」


…意地っ張り。

でもこうなると今日は骸早退しかないよなぁ…

廊下の向こうを見る。

雲雀さんも失態は晒せないとさっきふらふらしながらどっか行ってしまった。

…あの感じだと雲雀さんも今日1日は動けないはず。

まあ、一人でも何とかなるかな。

骸はやっぱりふらふらしながらもなんとか立ち上がれたようだ。

ちらりと俺を見る。


「犬。」

「なんれすかー、骸さん。」

「拉致。」

「らじゃ!」

「ほわああああ!?」


犬さんの肩に担ぎ上げられた。

それだけでもびっくりすんのにこの人いきなり窓から飛び出すから生きた心地がしない。

ここ3階!!犬さんともかく俺ただの人間!!


「暴れんな!ボンゴレ!!」

「無理無理無理ぃ〜!怖いから!」

「ピルピルすんな!」


ったくこれだからウサギはと愚痴を零す犬さん。

悪かったな、絶叫マシーン系全般駄目なんだよ、俺!!


* * * *


「ふぅ…やっぱり落ち着きますねぇ…」


いつもの髪型に学ラン。やはりこれがいい
まあブレザーも悪くは無いんですが。

メガネもあるのと無いのとではやはり視界が違う。

千種はよく毎日あんなのかけていられますね…


「骸、もう起き上がっていいの?」

「ええ。流石にもう一戦交えろと言われるときついですが。」


借りていたベッドから立ち上がる。

少し立ち眩みがしたが…まあどうってこと無いでしょう。

ふと見ると僕を見つめる綱吉くん。


「?何か?」

「いつもの骸だ。」


にこりと笑うポメラニアン。



…………ああああ、何思ってんだ僕は…!!


「どうしたんだ、骸。」

「君を子ウサギと呼ぶあいつの気持ちがとてもよく理解出来ました…」

「へ?」

「僕もだんだん君がポメラニアンにしか見えなくなってきた…」

「なんでそのチョイス。」


そうとしか見えないからですよ!!

この二足歩行小動物!!


ってそうだ今はそんな事実を確認している場合じゃない。


「綱吉くん、君しばらく学校休んで貰えません?」

「へ。」

「悪いんですがあのヒッチコックな男から君を守りきれる自信、無いんですよ…

表立って戦えるならいいですけど僕前科者なんであんまり目立つと…」

「え。あ、そうか。でも学校休むとリボーンが…」

「ならば。」


バサリとそれを取り出す。

目を丸くする綱吉くん。


「君、先生が戻るまで黒曜に通いなさい。」

「ふえ!?」


Sサイズの黒曜中制服。

それを手に彼はしばし固まった。








続く…





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