第七話 「…で2xを引いてy=4になる。それと同じで次。」 「は、はい。」 …千種さん流石。見た目通り理数系強い。 黒曜で同じクラスになった千種さんは凄い面倒見が良くて自習の時間にもかかわらずこうやって勉強を見てくれている。 リボーンじゃなくて千種さんが家庭教師だったらいいのに… キーンコーンカーンコーン… 「…昼か…屋上に行くぞ、ボン…沢田。」 「あ、はい!」 教科書をまとめて机に突っ込む。 入り口で待ってくれていた千種さんに追いつくと彼は先に立って歩き出した。 この人背、高いよなぁ。日本人じゃないからかな?ん? でも名前、日本名だよな…顔はどっちともつかないんだよな、三人とも… 俺と同い年でこの高さ…ここまでとは言わないけど俺も身長欲しいなぁ。 「…沢田。」 「はい?」 「後ろ歩くな。横にいろ。」 「へ?」 千種さんはよく分からないが困った?みたいな顔をしている。 なんで?背後取られたみたいで落ち着かないのかな? 「それ、多分違いますよ…」 屋上で骸に聞いたら骸もなんだか微妙な顔をする。 手にした烏龍茶のパックにストローを刺しながらチラリと俺を見下ろした。 「千種は子犬だとか猫だとかに好かれやすいんです。 しょっちゅう買い物帰りに足に纏わりつかれてましてね。 だから小さいものに後ろをついて歩かれると落ち着かないんですよ。」 「…どうせ俺はチビだよ。」 「これから伸びますよ。」 俺はびっくりして骸の顔をまじまじと見た。 そんなこと言ってくれんの、母さんだけだったのに。 「あまり長身とは言えないでしょうが…そうですね、今の獄寺や雲雀ぐらいにはなるんじゃないですか?」 「本当!?」 「ええ。」 やった!!170くらいは行けるってこと!? 俺が喜んでいると頭上にばふっと平たい物が落ちてきた。 「れもまわりもみーんな伸びんらからお前が一番チビなのには変わりねーよ。」 「ううう…うるさ〜い!!」 気にしてることをぉぉ!!!! がおうと吠える勢いで振り向けば俺の頭に弁当を平積みしている犬さん。 くうぅ…飛びかかりたいけど動けない… 「犬、弁当で遊ぶな。」 「へいへい。」 「はい。どのくらい食べるか分からなかったからボスのは千種と同じにしたの。 足りなかったら言ってね。」 「ありがとう…うわぁ…」 凄い…本当に手作りの弁当だ…!!冷凍食品とか全然使ってないよ!彩りも可愛くて。 おにぎり型のオムライスとエビピラフに可愛く桜型にカットされたソーセージ。 ポテトサラダに四つ切りにしたプチトマトが綺麗に並べられて複雑な形のキュウリが添えられてる。 菜の花のお浸しに乗ってる花はよく見れば沢庵を切ったもので。 唐揚げはカラッとした衣が凄い食欲をそそる。 「デザートもあるの。杏仁豆腐なんだけど…」 「凄〜い…これ全部クロームが?」 「うん。料理楽しいから…」 はにかんだ笑みを見せる少女に俺は少しホッとする。 よく事情は分からないけれど、彼女が今は笑える環境にいる。それが嬉しい。 「…微笑ましい情景ですねぇ。」 「骸さん、クロームがボンゴレに取られるピョン。」 「俺にはそうは見えない…むしろ」 「「ポメラニアンとパピヨンが日向ぼっこしてるようにしか見えない」ですね。」 「そこ、うるさい…」 どうせ俺は異性として数えられないよ!!気にしてんだから言うな!! そして骸!!犬は犬でもなんでそのチョイスなんだ!! 問うてみればしれっとした顔で「ぴったりじゃないですか」と抜かしやがった… 殴りたい…っ! 昼を終えて教室に戻る。 次は…国語?いや体育か…あ、しまった。 俺制服しか貰ってないぞ? 「千種さん…どうしましょう…」 「流石に骸様もジャージは…学年ごとに色違うからな…」 「犬さんに借りれば…」 「サバイバルな格好で授業出たいなら止めない。」 「遠慮します…」 見学するか?そう思ってたら千種さんはチラリと俺を見て少し悩むような仕草をした。 「見学…沢田がするなら俺もするか。」 「へ!?なんでそうなるんですか!?」 「雲雀恭弥を侮らない方がいい。黒曜だからって…安心できない。」 というのは口実で体育めんどい。 そういう千種さんに笑ってしまった。正直過ぎるよこの人! 見学と言ってもする事ないなら一緒と俺たちは保健室に向かう。 並盛じゃこんなこと出来ないし…サボりなんてちょっとワクワクする。 保健室につく。千種さんは扉を開けようとして手を止めた。 「ん…ああ、そういえば今日は保健医いる日だ。」 「え。」 「まあいても居なくても同じだから。」 カラリと戸を開けた。 「あれ、どうしたの?」 「あの…」 顔を上げてぎくりとする。な、なんだろ。 ここはダメだ。そんな気がする。 伝えようと千種さんの袖を引く。 でも千種さんはそれには気付かなかったみたいで俺を後ろに押しやる。 「千種さん…?」 「こいつ…殺気出してる。敵だ。」 そういう千種さんは前を…保健教師を睨みつけている。 俺もそちらを見て…さあっと血の気が引くのが分かる。 鋭さを増した切れ長の目。病的に白い肌。 細く、でも鍛えられた肢体には隙がない。 月のような冷たい印象の美丈夫。 こんな人、二人といるはずがない!! 「ひば、り…さん…?」 「やあ、子兎。」 白衣を着た…成人した姿の雲雀さんが。 くすりと愉しげに笑ってそこに座っていた。 続く… |