第八話






バンッ!!


「どういうことか説明しろ、ボンゴレ…」

「俺も聞きたいっ!!」


今にもヨーヨー出しそうだった千種さんを捕まえて保健室を飛び出した。

今は視聴覚室にいる。

千種さんには失礼だけど雲雀さんに挑めば命は無い…しかもあの人大人だったし…

なんで大人雲雀さんが。

ランボもいないのに…10年バズーカはないだろ…

う〜んと悩んでいると千種さんが携帯を取り出す。


「いろいろ対策は練ってたけど…これは想定してなかった…」

「俺もびっくりですよ…」

「あいついろいろ人間としてどうかと思ってたけど。」

「あの人を常識の物差しで計っちゃ駄目ですよ…」

「うちの骸様もなかなかアレな人だけど…上には上がいるな。」

「千種さん?何してるんですか?」

「10年くらい成長する薬…心当たりがある。」

「へ?そんなのあるんですか?」


千種さんはこっくりと頷くと携帯に向き直る。


「ただ…人間、いや生物用では無いんだけどな…」

「?」

「植物用なんだ。」

「うえぇ!?」

「これだ。」


携帯の画面を向けられたけど…お約束の(多分)イタリア語。読めない。

写真に紫の瓶と青い液体が注がれているのが二枚あった。


「以前、絶景と国でも有名な森があるファミリーの抗争が原因で燃えたことがあった。

半分の木が焼け倒れ森は無残な姿になった。

ところが一週間もしないうちにそれが元の状態に戻っていた。

それを使って木の成長を無理矢理早めたらしい。」

「これ…すごい色だけど…人体には…」

「さあ。雲雀恭弥と同じ使用法を考えた人間はいたらしいな。全員死んでるが。」

「い!?」

「それのせいじゃない。正体バレて殺されたんだ。成分表見る限りでは大丈夫だろう。」


そう言われても…ってどうやってこんなの手に入れたんだ、雲雀さん…

千種さんは携帯を操作すると誰かに電話を掛ける。多分骸だろうけど…


「これでここも安全じゃなくなったな…」

「どうするんですか?」

「どうもしない。沢田はアルコバレーノが戻るまで黒曜にいるしかないだろう。」


確かに。

並盛より黒曜の方が雲雀さんの影響力は少ない。

それに俺家抑えられてるしな…

帰っても安息の地は無さそうだ。

骸が電話に出たようだ。千種さんの口調が改まる。


「…はい。出ましたよ…いえ、なんとも。

とりあえず、骸様は絶対に保健室に近づかないでください。

……いえ、理由は後程。…今は視聴覚室に。」


ちらりと俺を見て千種さんは眼鏡を押し上げた。溜め息をついている。


「はい、分かりました。では。」

「何?」

「次の授業終えたら寄り道せず帰れとのことだ。クロームを見張りに立たせるからその隙に。」

「…なんかすいません…千種さん、どこか行く予定だったんですか?」

「ゲーセン。違う時行くから、いい。」


…まあ、同い年だし。ゲーセンハマっててもおかしくはないよね。

すんごい残念そうなのが気の毒だけど…


「…何にハマってるんですか?」

「ハウス・オブ・デッド4…射撃好きじゃないけど、あれは面白い…」

「それ、振ってリロードするヤツでしょう?」


俺がいうと千種さんが目を丸くしてじぃっとこちらを凝視している。

意外?俺もそう思う。

ホラー嫌いだし射撃ゲームも苦手なんだけどそのゲームの2を去年の夏、獄寺くんとやってそれからハマってしまった。

ゾンビは怖いけど俺が始めて友達とやったゲームだから思い入れ強くて。

3は怖くてやってないんたけど4はこないだ三人でやってまたハマってしまった。


「ってそれはどうでもいいですね。千種さんはホラーとか好きなんですか?」

「別に…」


千種さんはふいと横を向いてしまった。


「骸様が…」

「はい?」


眼鏡をまた押し上げて千種さんはぽつりと呟く。


「日本に来た時…三人で遊んだゲームなんだ。」

「……そうなんですか。」


じゃあ俺と同じですね。

そう言ったら千種さんが微かに笑ったように見えた。

すぐ口元隠しちゃったからよくは見えなかったけど。


* * * *


「あれ骸?」

「千種を信用していないわけではないですがあの男は油断ならないのでね…」


放課後教室を出ると骸が待ち構えていた。

一緒に帰るらしい。

クローム一人なのが心配だったけど「いざとなれば犬を盾に逃げろと言ってあります」と骸がしれっと言うので逆に犬さんが心配になってしまった。


「まあいざとなれば犬も逃げるでしょう。戦えとは言ってませんからね。」

「ならいいけど…」

「それよりあの男、またすごい手を使ってきたようですね…」

「はい、骸様のストレートヘア並みに驚きです。」

「…千種、何か不満があるなら聞きますよ。」


三人で歩く。二人共背が高いから捕獲された宇宙人みたいな気分だ…

途中、夕飯の買い出しに行くという千種さんと別れてマンションへ向かう。


「どうですか、黒曜の生徒体験は。」

「不良の巣窟って聞いてたけど普通。あと千種さん家庭教師だったら最高だね。」

「ほう。」

「あと骸ってゲームすんだな。意外。」

「娯楽は好きですよ。君に会ってからは世界が変わりましたから。面白いものを面白いと感じられるようになりましたし。」

「…お前、その天然タラシ発言どうにかならない?」

「?そんな発言しましたか?」


したんだよ…








続く…





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