第二話 パシャっ パシャっ 「いつまでやってんですか。」 「しばらく帰って来れねぇから癒やし画像を撮り貯めてんだろうが。」 「…連れて行けばいいじゃないですか。」 「あんなんが山ほどいるのにか。」 ビシリと獄寺隼人の指さす先には猫用鞄に詰め込まれた雲雀恭弥。暴れてますけど。 まあ、獄寺がこれから行くのは猫共の巣窟ですしねぇ。 むしろハムスターを可愛がるこの男がおかしいわけですし。猫の癖に。 綱吉くんはと言えば雲雀の脅威が無くなってやっと安心したのかクッションに埋もれてすよすよと寝息を立てている。 ふむ、小動物は興味ないんですが確かに愛らしいですね。 ツンツン鼻でつつくとひょこりと動いた。 …これが癒やしですか。悪くないです。 獄寺など携帯握り締めて悶絶している。 「あああ!!可愛い…!!」 「いいからとっとと行きなさい。時間ですよ。」 「お前ほんっとうにあいつから綱吉守れよ!?死なせたらマジで祟る。」 「はいはい。」 * * * * 「んん…んぅ?」 「まだ寝ていていいんですよ?」 「ん…起きます…」 あれ。起きたらモサモサの中に居た。 上見上げたら黒い犬の顔。 俺今骸って犬の前足の間にいるんだ。 顔こしこしやってたら犬の大きな舌に舐められた。 「んあ?」 「おや、つい…すみませんね。」 「いいえ。」 前足によじ登ってきょときょとしてたら恨めしそうな顔の猫と目があった。 ひぃぃ!! 慌て犬の毛に潜り込む。 雲雀さんは俺が起きたのを見てとると骸さんの周りをぐるぐるし始めた。 あうぅ…全然諦めて無いぃ〜… 「僕も舐めたい…」 「舐めるだけで終わらないでしょう。」 「美味しい?」 「黙秘します。もうネズミ食べたいなら狩ってくればいいでしょう。」 「ネズミ飽きた。それがいい。」 食べられちゃうよ〜、食べられちゃうよ〜!! どうしよ〜!! 俺は腹の下に潜り込むくらいに骸さんに体をくっつけてガタガタブルブル震えた。 「大丈夫ですよ。そんなに怯えなくても。あれは冗談ですから。」 「ふええ、嘘だ、本気だもん!!」 冗談ならあんなギラギラな目はしない。 昨日、会ってしばらくは全然俺に興味示さなかったのに。 挨拶したら舐められて気付いたら前足で抑え込まれてがっぷりとやられかけた。 ギリギリで獄寺くんが助けてくれたけどあれは絶対食べる気だった!! 「…貴方ね。」 「美味しかったんだもん。凄いいい匂いするし。」 「ほら〜!!」 とてとて歩み寄ると雲雀さんは骸さんの足の間で動けないでいる俺をじぃっと見下ろす。 「ちょこっとでいいんだけどな。くわえるだけで。」 「い〜や〜!!」 「じゃ噛まないから。痛み感じないようにするから。」 「丸呑みする気でしょう!!絶対やです!!」 「また出してあげるから。」 「また呑むでしょう!!そんな恐怖に耐えられるか!」 「我が儘だよ、君。」 「命にかかわる当たり前の主張だーっ!!」 いやだ、もういやだ!! ショップに帰りたい〜… 「ふえええ…」 「はいはい。ここにいればあれには手出しさせませんから。」 ベロベロと舐められる。 獄寺くんいない今雲雀さんの脅威から守ってくれるのは骸さんしかいない… 俺はひっしとそのでかい胸に張り付いてすんすんと泣いた。 「可愛いですね。全くこんないたいけな生物をいじめるなんて…貴方血が通って無いんじゃないですか?」 「よく言うよ。」 ふんと雲雀さんは不快気に鼻を鳴らすと踵を返した。 「雲雀、どこに行くんですか。」 「外。」 「遊びに行くのは勝手ですが人狩りは駄目ですよ。アルコバレーノからのお達しです。」 「聞こえないね。」 「そうですか。まあ、僕には関係無いです。 綱吉くんの面倒を見るよう言われただけで君のお守りは頼まれてない。」 「そう。干渉しなきゃ何してもいいよ。僕も好きにするから。」 雲雀さんは出窓に飛び乗ると器用に前足でガラスを開けた。 そこから飛び降りようと身を乗り出してから思い出したようにこちらを振り向く。 「ああ、そうそうネズミくん。」 ハムスターです。 言えないから心の中で呟いておく。 「…はい。」 「多分気付いてないと思うから教えておいてあげる。 君が懐いてるそいつだけど。 狼だから。じゃ。」 ……………………… は〜いいいいぃぃ!? 俺が絶句してる間に雲雀さんはひらりと飛び降りてしまった。 俺はこてんと座り込んだまま上を見上げる。 穏やかな色の赤と青の瞳とかち合った。 「………………」 「………………」 「……………嘘、ですよね。」 「あれ、気付いてませんでした?」 マジか。 俺は逃げる気も起きず呆然と黒い狼を見上げる。 またベロベロと舐められた。 「…確かに美味しいです。」 ―――お前もか。 俺は自分の出せるトップスピードでそこから逃げ出した。 前言撤回。 早く帰ってきて、獄寺くん!!!! 続く… |