・獄寺の奮闘 ――数時間前。 「…………………」 何…が起こった? 僕はぱちくりとまばたきを繰り返して辺りを見渡した。 壁。開いているのは…頭上だけ。 上を見上げてようやく僕は自分の状況を理解した。 丸い空が見える。どうやら深い落とし穴にハマったらしい。 ………何故こんなベタな罠にかかっているんだ、僕は。 「かかったな。」 「取りあえず無事か〜?」 「!?」 二つの顔がこちらをのぞき込んでいる。獄寺隼人と山本武だ。 何故彼らが…またアルコバレーノかボンゴレか? 僕がそう思っていると獄寺がニヤリと笑う。 「てめーが何考えてるかなんてお見通しだぜ。けどな、今回マフィアは関係ねぇよ。」 「?何が目的ですか?まあ僕には関係ないことです。今すぐこんな穴」 「脱出しない方が多分いいと思うぞ。いや、マジで。」 「?」 苦笑する雨の守護者に疑問符を浮かべていると獄寺がぱかりと携帯を開きこちらに画面を向ける。 「さて、ここに三つのメールアドレスがある。」 「…はぁ。」 「お前が不審な動きをした際、この中の一つにクロームの携帯番号を送信する。」 「…………」 ま、まさか… 「因みに選択肢はランダムで決定。上から保健医・浮世絵・眼鏡ガッパとなっております!」 「!?」 あ、悪魔がいる!悪魔が居やがりますよ、あそこに!! あんないたいけな子をロリコン共の餌食にする気か!! 「さあ、どうする。六道骸。」 「くっ…これだからマフィアは…!!分かりました、聞きます。聞きますよ、何が目的ですか。」 「始めから素直にそう言やいーんだよ。」 ……極悪な笑いしやがって…悪役代えた方がいいですよ、あいつに… 僕はどさりと穴の底に腰を降ろすとやさぐれた態度で悪魔を見上げた。 「実はな、今日は10代目の御生誕日なんだが。」 「!」 そうなのか。初めて知った。 最近彼であそ、いや彼と遊ぶことが増えていたのに。 しかしそれとこの愉快な状況、どう関係があるのか。 「誕生日のプレゼント悩んだんだけどな、どうせなら変わったものにしないかって話になってな。」 「あの方にありきたりな物なんて相応しくねぇ。ここはインパクトを大事にしようと思ってな。」 獄寺隼人が胸ポケットに手を入れて何かを取り出した。 「六道骸…お前に恨みは積もって余りあるほどあるが」 取り出した物を両手でビィン、と張り伸ばす。 「10代目の誕プレになってもらおうか。」 それはそれは愉しげな表情で悪魔が言い放つ。 彼が張り伸ばしたのは…目にも鮮やかな緑のリボンだった。
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