二界 「傾城」


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その問いに僕は


「シルフがいいです。」


と答えた。


「一番、イメージに合うと思います。」

「ふ〜ん。なるほど。」


白蘭は一つ頷いて奥の部屋に引っ込んでいった。

彼の姿が見えなくなると試着室からげんなりした顔の綱吉くんが顔を出した。


「は〜……まったくあいつは毎回毎回……獄寺くんがいないとすぐこれだ……」

「あれ、着替えちゃったんですか?」

「当たり前だ!」


カーテンを乱暴に開けた綱吉くんの服装は普段着に戻ってしまっていた。

さっきまで着てた服、可愛かったんですが……


「スカートじゃないのにしてくれたじゃないですか。」

「バニーよかスカートのがマシだ!!」


顔を真っ赤にして叫ぶ綱吉くん。

……よく分からない。

足周りに何か付けるのを嫌う彼は普段からストンとしたワンピースのような服を着ている。

なのになんでスカートはダメなんだろうか。


「いいか、骸。ハロウィンは分かるな、ハロウィンは。」

「はい。祖先の霊と一緒によくないものも帰ってくる日です。
だから仮装したりジャック・オ・ランタンで悪霊を追い払う行事です。」


片手を上げて答えると綱吉くんが「よし」と頷く。

本で読んだだけなので参加するのは初めてですが。


「いいか、骸。これだけは覚えておくこと!」

「?はい。」

「コスプレと仮装は違う。」

「……………………………はい?」


据わった目でそう言う綱吉くんに瞬きを返す。

……『こすぷれ』ってなんでしょう。

首を傾げる僕に綱吉くんは試着室につり下げられた服を指差して言い放つ。


「これはハロウィンの仮装用のものじゃない。」

「……えと、これは?」

「それはいい。」


現在僕が着ている「ピーターパン」の服を指して尋ねると綱吉くんが首を振る。

…………違いがイマイチ分からない。

スカートがダメなのか……?後で獄寺に聞いてみよう。


* * * *


長いな……

何本目かわからない煙草に火を点ける。

テラスの灰皿に俺の吸い殻が山になっている。

腕時計を見て、会場に目線を移す。

いつも以上に時間が掛かってるが……


毎年開かれる白蘭主催のハロウィンパーティー。

参加者は当然仮装がドレスコードになる。

俺たちも一応、それらしい格好をして参加しているんだが10代目だけ絶対に入り口でヤツにとっ捕まる。

そして難癖つけられ最終的にヤツの『僕が見繕ってあげるよ〜』で拉致される。

今回は骸ごと連行された。


「…………」


煙草の先端が灰になって落ちる。

毎年疑問なのは何故着替えにこんなに時間がかかるのか……


「お待たせ〜!獄寺クン!待った?」

「待ちくたびれたな。」


睨んでも上機嫌な男はニタニタと笑ったままだ。


「まーまー、今回の仕上がりも可愛いから!」

「……………」


煙草を灰皿に押し付けて手招きする白蘭の方へ向かう。

奴が指差す先、そこには――――




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