三界 「純白に濁る柘榴」


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奴が指差す先、そこには。


「にゃ〜、なんてね。」


長靴に尖り帽子、頭に付けた猫の耳。

窓の外にケット・シー姿の沢田さんがいた。

焼き菓子の入ったバスケットを手に手を振っている。


「な……にしてるんですか!?」

「ん?知らねえのか、獄寺。」


山本が意外そうな顔で俺を見る。

知らねえってなにがだ……?


「ここらは十番目の月の終わる日には妖精に仮装して魔物を追い返す習わしがあるんだ。」

「へぇ……変わってんな。」

「ああ。祭り要素が強いけど仮装用の布地は聖水に浸したものが使われるから実用性もばっちりだ。
確かにこの時期は魔物も魔力が増すからな。」


……確かに俺の区域でもこの時期は清めの祭りがあったな……

形は違えどそれぞれの方法で対策をするわけか。


「あと外出るときはなんか飴でも持ってけよ。
『菓子か悪戯か』ってチビたちが歩いてるからな。」

「手ぶらだと悪戯って訳か。」

「そうなるな。」


なるほど……だから沢田さん、あんなバスケットなんか……………


「……っておい。」

「なんだよ。」

「あの人仮装する必要なくないか。ていうかしたらダメだろ。」


魔物が魔物追い払う仮装してどうすんだ。

そう聞けば山本はカラカラ笑って「祭り好きなんだ」と答える。

そういう問題か……?


* * * *


「お兄ちゃん!お菓子か悪戯か〜!!」

「はい。」


バスケットから菓子を取り出して子ども達に渡す。

嬉しそうにきゃっきゃと騒ぎながら走り去る後ろ姿を見送る。

う〜ん、朝から頑張ってお菓子を作ってくれた凪に感謝だ。


「……なにしてんの。」

「あ、雲雀さん。」


怪訝そうな顔で俺、というか俺の頭を見ている雲雀さん。

簡単にこの土地の風習の説明をすると「へぇ」と感心したような声を出す。


「面白いね。」

「でしょう?一度参加してみたかったんですよね。」

「僕のは無いの?これ。」


つんつんと偽物の耳を引っ張られる。

まさか雲雀さんが仮装に興味を持つとは……


「教会の周りに出店があるから……買いに行きます?」

「うん。」


歩きながらも雲雀さんは余程俺の付けてる耳が気に入ったようでずっと撫でたり握ったりを繰り返している。

雲雀さんもケット・シーがいいのかなぁ……でもこれあんま大きいサイズってないんだよね。


「あ、あそこで……」


衣装屋を見つけて駆け寄ろうとする。

けれどがっしりと襟首を捕まれて動けない。


「ひ、雲雀さ……!!苦しいんですけど……!!」

綱吉、あれ。」

「え?」


雲雀さんが睨んでる先。

そちらに目を向ける。


「あ…あれ…?」

「なんであいつがいるわけ……?」




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