四界 「鬼の鏡」


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「なんであいつがいるわけ……?」


地を這うような、心底不機嫌そうな声の雲雀さんに俺は頬を掻いて乾いた笑いを返す。


「……にゃあ〜ん。」

「あら、お帰りなさ〜い。可愛いでしょ!」


雲雀さんのおばさんが両手で持ち上げているピエロの格好のヒマラヤン。
確かに可愛いけど……!!

可愛いけど………っ!!!!

ピエロの鼻まで付けてる……っ!!!!

俺は口を抑えて半目のヒマラヤンから目をそらす。

笑ったらダメだ……っ!!

笑ったら………っっ!!!!

ゆらゆらと揺れる尻尾がとっても不満そうだ。


「母さん……それ。」

「さっきお店で見つけて買っちゃったの。
ほら、ハロウィン当日じゃない?だからちょっと安くなってて。
それでキョウちゃんにぴったりだと思って!!」

「な〜お。」


ニコニコ顔のおばさん。けどピエロなヒマラヤンはかなり不服そうだ。

うちにいないと思ったら雲雀家で捕まってたのか……


「サイズまでぴったり!どう?私の見立て。」

「とっても可愛いと思いますっ……」


噴き出したいのを堪えながら突き出された猫を抱き上げる。

恨みがましい顔のキョウがバシバシと尻尾をぶつけてくる。

ダメだ、限界……!!!!


「し、失礼しますっ!!」

「あ、ちょっと!!綱吉!!」


俺はピエロにゃんこを抱えたまま雲雀家の玄関から飛び出した。


* * * *


「あっはははははははは!!あはは、ひ〜!!!!」

『綱吉っ……』


バシバシとリビングの床を叩き笑い転げる綱吉。

そんっっなに面白いかい……


「も〜、ツッくんたら。そんなに笑ったらキョウちゃんが可哀想じゃない。」

「無理……っ!!!!ピ、ピエロ……!!寄りによってピエロ……!!」


一度ちらっと此方を見てまた腹を抱えてうずくまる綱吉。

鼻かい?この道化の鼻がいけないのかい?

前足で鼻を外そうと顔を擦る。

しかしその動作にすら綱吉は肩を震わせている。

まったく、どうしろというのか。


『何がそんなにおかしいのか教えて欲しいね。』

「あはっ……はっ……ごめ……だって雲雀さんがピエロって……
もうキョウじゃなくて雲雀さんで想像できちゃって……!!!!」

「心配しなくても着ないから!」


ガラリと音をさせてテラスの窓をあけるもう一人。

手に布巾のかかった大皿を持っている。


「あ、雲雀さん。」

「パンプキンパイのお裾分け。キョウ借りた礼だって。」

「あらありがとう〜!今お茶入れるわね。」

「お構いなく。」


口ではそう言いながらズカズカと入り込んできた彼は綱吉の隣に腰を降ろすとマジマジと僕を見つめる。


「悪鬼の威厳も風格もあったもんじゃないね。」

『君も着たらどうだい。』

「やだ。」


僕だって嫌だ、こんな服!!

脱いでやろうにも背中でにファスナーがついてるから独りじゃ脱げない!

諦めずにゴロンと寝転がる。

するとすかさず携帯を構える綱吉ともうひとり。



「…君たち……覚えてなよ……!!!!」




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