五界 「パンが無ければ君を食べるまで。」


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「…君たち……覚えてなよ……!!!!」


けっ。

んなとこで凄まれたって怖くねぇよ。

天井からつり下げられた黒猫を象った菓子入れ袋。

そこに菓子ではなく本物の猫を入れて入り口を雁字搦めに縛る。

まあなんも知らない奴が見たら動物虐待だがこいつに限りそんなものは存在しねぇ。


「お前野放しにしてたらいつまで経っても準備が終わらねえよ。」

「獄寺、時間が。」

「わかってる。骸、お前ここ片付けしとけ。俺はあっちをやる。」

「はい。」


小麦粉だらけの部屋は目も当てられない惨状だ。

けど元凶は捕らえたし、箒をくわえた犬に後は任せて俺は台所に戻る。

こっちもこっちで酷い有り様なんだがな……

台所の片隅には真っ白になった中小の毛玉が並んで丸くなっている。


「ふぎっ。」

「きゅ…」

「………こりゃまた……でかい白玉粉団子だな……」


黒猫暴走の被害者二匹をつまみ上げる。

マメタヌキとハムスターは走り回った(逃げ回った)せいかぐったりとしている。


今日は町内会のハロウィン祭りの日だ。

子どもたちが近所を回って菓子を要求する。

通常は「お菓子か悪戯か」なのだが菓子を提供すると代わりに祭りの出店用の無料券が貰える。

「大人も子どももお得なイベント」というわけだ。

そしてそのハロウィン用に簡単な焼き菓子でも用意しておこうと思ったんだが……

その製作中にいつもの鬼ごっこが始まり、今に至る。


菓子分は既にオーブンの中だったから無事だが……こちらの被害がな……

綱吉もクロームもただ小麦粉被っただけなら良かったんだがびしょ濡れの状態だったからべったりとした塊と化している。


「ハムちゃん真っ白……」

「クロームも真っ白だよ〜。でも目のとこだけ黒いから白タヌキみたい。」

「タヌキだもん。」


二匹が寄り添ってると横倒しになった雪だるまのようだぜ……



………………あ、ちょっと面白いこと思いついた。


* * * *


「い〜り〜え〜さーん!」

「入れて。」


バケツとデッキブラシを持ったまま辺りを見回す。

あの二人また来たのか……今度はどこから……


「って!?」


窓の縁にちょこんと乗った小さい毛玉が2つ。

そこにいるだろうって思ってたんだけど!

確かにいたんだけど!!

なんかちっさいジャイアントパンダが二匹いる!!


「「とりっくおあとりーと!」」

「へ!?あ、仮装!?」


窓を開けてクロームちゃんと綱吉くんを中に入れる。

近くで見たらこれ、小麦粉……?

になんか黒い墨みたいなの塗ってパンダ柄にしてるのか……誰の案だ。


「しょ〜うちゃ〜ん。なにしてんの〜♪」

「うげ……」


面倒なのが来た……




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